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たんたんと、たんたんと、

内弁慶の主婦が、坦々としたものごとを、淡々と写真とともにつづる。

オオキナキのものがたり

 

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光が欲しい
雨水が欲しい
たくましい幹が欲しい
全てを吸い尽くせる程の太く長い根が欲しい
 
オオキナキはいつも欲しがっていた
毎日自分の欲望を見つめ
前だけを見ていた
欲しい、欲しい、欲しい
 
 
欲しいものを手に入れる為に
周りにいるライバルを蹴落とすことも厭わなかった
オオキナキにとってそれはただ必要だったのだ
 
 
ある頃からオオキナキの幹に刻まれる年輪は間隔を狭めはじめた
 
 
いつもと変わらず坦々と雨が降り日が降り注いでいるのに
幹は成長することをやめ
枝葉は痩せ細りはじめた
確かに生きているはずなのに
欲しいものが手に入らなくなった
ただただ失っていくばかり
 
オオキナキは苦しくて苦しくて
自分自身を抱き締めるかのように身を縮めうつむく
その目は虚ろで何もとらえていない
毎日毎日黒々とした地面に目をやるしかなかった
 
 
黒っぽくていかにも養分を蓄えている土
それはオオキナキから溢れた葉たちと
無数の微生物が作り上げたもの
そこにはたくさんの生き物達が身を寄せ合っている
 
 
しかしオオキナキの目には黒々とした単色の世界しか映らない
 
 

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ある日オオキナキの黒々とした視界に突然ぼんやりと何かが光って見えた
 
なんだろう

オオキナキは目にしたソレを何と呼べば良いのかわからない

色というものの存在を知らず

自分の足下にソレが存在していたことに驚いたのだ

 

オオキナキは毎日毎日ぼんやりしたソレを見つめた

ただただ見つめていた

何者なのか知りたくて

ただただ見つめていた

 

 

次第にオオキナキの目は像を結びはじめた

 

 

どうやら何者かわからないソレは

たくましかった頃の名残りである自分自身の根に

静かにひっそり寄り添っていることを知った

 

 

 

オオキナキは何者かわからないソレを

ハナと呼ぶことにした。