たんたんと、たんたんと、

淡々と坦々と綴る日々

フミキリスト

我が家のかい十2歳は踏切が大好きだ。




強調しておく、電車ではなく踏切だ、
電車はあくまでも踏切を通過する脇役。




そういう訳で、週に数回は最寄りの駅まで散歩し、ワタシとかい十は手を繋いで踏切の前にたたずむ。





そして、15分に一本やってくる電車に合わせて鳴り響く、カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンを心待ちにするのだ。




どうやら、かい十は電車が来ない間は踏切をゆっくり走り抜けていくクルマを見て楽しんでいるようだ。




トラックやスポーツカーに向かって、ぶーぶー!ぶーぶー!と叫び続け、
時たまminiが通ると、ミニ!ミニ!ミニィ!とバカの一つ覚えで叫ぶ。





そして遂にあの瞬間がやってくる。




カンカンカンカン・・・が鳴り始めた瞬間
クルマがピタッと停止し雑音が鳴り止み
踏切の赤い信号が点滅する。





カンカンカンカンだけが鳴り響く音に
不思議と静寂を感じる。





遮断機が悠々と降りてくる一連の流れをジッと見つめるかい十。



その静寂の中、
巨大な電車が通過するわけだが
そこには全く興味を示さないもんだから面白い。




そして30分ほど踏切の前でたたずんだワタシとかい十は、また家へと帰るのである。




こんなに踏切を愛するかい十だが、
世の中には面白い人がたくさんいるもので
そういう踏切好きの事を《フミキリスト》と呼ぶらしい。




ちなみに、有名なフミキリストと言えば、
フリーアナウンサー赤江珠緒さんの甥っ子せいちゃんだ。




かい十がせいちゃんの様にどんどん踏切沼にはまっていくのかどうかはまだ分からないが、
ワタシと夫は踏切好きの気持ちを大事に育もうと企んだ。




そこで、名鉄の主要駅である知立駅の開かずの踏切をクルマで通過したら喜ぶに違いないと確信し、そこまでドライブをした。




開かずの踏切は2つの踏切が連続している。すなわち、一つ目の踏切を通過するとクルマが2台ほど停車できるスペースがあり、また踏切があるのだ。




だから、タイミングによっては踏切と踏切の間で踏切に挟まれながら停車し踏切を思う存分味わえる。いわば踏切サンドイッチだ。これは、フミキリスト的に言わせれば幸せタイムに違いない。




実際、わたしたちのクルマも2つの踏切を通過するまでに5回ほど遮断機が降りてきた。





運良く、踏切サンドイッチも味わった。




かい十は身を乗り出し踏切を味わっていたと思う。




だけど、なんか思ったほどの興奮が感じられない。




興奮しているのはむしろワタシの方だった。




その後かい十に尋ねてみたのだ、
さっきのカンカンといつものカンカンどっちが好きか。




まぁ、まだ上手く喋れないから
さっきのすごいカンカン好きなひと?
いつものカンカンが好きなひと?
といった具合だ。




そしたら、なんとまぁ
強い意思を持っていつものカンカンに
ハイッと返事をしたのだった。




フミキリストは奥が深い。




その後ワタシと夫で考察してみたのだが
おそらくかい十フミキリストは



カンカンカンカンが鳴り出す
クルマがピタッと停止
雑音が鳴り止む

踏切の赤い信号が点滅し
そのシンとした空気の中
遮断機が悠々と降りてくる

その一連の流れぜんぶまるまるっと味わうタイプなのではないかと疑っている。




とめどなく降りてくる踏切よりも
15分待って見る踏切を好きという2歳児。



我が子ながらその感性に何だか魅力を感じる。
カッコいいなおい。




まぁ、真相は闇の中であるが
実にフミキリストは奥が深い。





そう、踏切ひとつとっても好きを感じるポイントはひとそれぞれなのだ。






できるだけ、かい十の好きを感じるポイントを大事にしていきたいものだ。